共有

第4話

霧島家が破綻する前には、霧島弥生を追いかける男性は数えきれないほどいたが、彼女が気に入った人は一人もいなかった。時間が経つにつれて、皆は霧島家のお嬢様が清楚ぶってると言うようになっていた。

そして破綻後、多くの男は彼女をからかう心を燃やし、裏でオークションを始めた。

彼女が最も落魄、最も屈辱を味わったとき、宮崎瑛介が戻って来た。

彼はそのうるさくオークションをする人を片付け、それぞれに痛ましい代償を支払わせた。そして霧島家の借金を完済し、彼女に言った。「私と婚約しなさい」

霧島弥生は彼を驚いた表情で見つめていた。

その顔を見て、彼は手を伸ばして彼女の顔を撫でた。

「何だその顔?君を利用するとでも思っているのか?安心して、偽の婚約だけだ。おばあちゃんが病気になったんだ。君のことをとても好きだから、君と偽の婚約をすることで彼女を喜ばせたい。霧島家を再建する手助けをしてあげるから」

ああ、偽の婚約だった。

ただおばあちゃんを喜ばせるためだった。

彼が自分のことが好きでないと彼女はわかっていた。

それでも、彼女は同意した。

彼の心に自分はいないと明らかにわかっているのに、落ち込んだ。

婚約後、霧島弥生はとてもかたくるしかった。

二人は幼馴染だったが、前はただ友達として接していたので、突然の婚約に霧島弥生は言葉にできない不自然さを感じていた。

ところが、宮崎瑛介はとても自然だった。各種のパーティーやイベントには彼女を連れて行った。一年後に宮崎おばあさんの病気が悪化したため、二人は結婚し、霧島弥生が皆から羨まれる宮崎奥様となった。

世間では、この幼馴染の二人がついに結ばれたと言われていた。

気づいたら、霧島弥生は思わず笑っていた。

残念ながら、実りなどなかった。ただ互いに希望する取引に過ぎなかった。

「まだ寝ていないのか?」宮崎瑛介の声が突然聞こえてきた。

すぐに、そばのマットが凹んで、宮崎瑛介の清潔な香りに周りが包まれた。

「話したいことがある」

霧島弥生は振り向かず、宮崎瑛介が何を言いたいか大体わかった。

宮崎瑛介は言った。「離婚しよう」

予想されていたにもかかわらず、霧島弥生の心はドキドキと高鳴った。彼女は心の中の波を押さえ、できるだけ落ち着くようにした。「いつ?」

彼女はそのまま横たわっていて、表情は落ち着いて、声にも何の起伏もなく、まるで普通の出来事のように話しているかのようだった。

彼女のその様子に宮崎瑛介は眉をひそめたが、それでも口では言った。「すぐにだ。おばあちゃんの手術が終わった時」

霧島弥生はうなずいた。

「わかった」

「……それだけ?」

その言葉を聞いて、霧島弥生は彼を一瞥した。「何?」

彼女の目は清潔で、何の曇りもなかった。宮崎瑛介は彼女の質問に言葉を失い、しばらくしてから仕方なく笑った。

「何もない。良心がないと思ってな」

一日の夫婦であったとしても、百世の縁として見なすべきだと言われているが、少なくとも二年間一緒に過ごした夫婦として、彼が離婚を提案したのに、彼女がこんなに平静だったとは。宮崎瑛介は意外に思った。

まあ、そもそも二人の結婚は互いに求めているものを得るための取引だった。

彼は、ただ彼女の周りの男性を遠ざけた存在だった。

この二年間、おばあさんのことがなければ、彼女はもう、彼との関係を断っていただろう。

宮崎瑛介は、霧島弥生の平静な反応がもたらした不快感を拭い、彼女のそばに横たわり、目を閉じた。

「瑛介」

霧島弥生は突然彼を呼んだ。

宮崎瑛介は急に目を開けて彼女を見た。その奥深い目が夜にとても鮮やかだった。

「何か言いたいことはない?」

霧島弥生は彼の綺麗な顔を見つめ、ピンクの唇を動かして、最後にこう言った。「この二年間……ありがとう」

その言葉を聞いて、宮崎瑛介の目の中の清潔な光が消えた。しばらくしてから彼は唇の端を引っ張って言った。「うるさい」

「うるさいかな?」

霧島弥生はそっぽを向いて、離婚したら、このような機会はもうのないだろうと考えていた。

関連チャプター

最新チャプター

DMCA.com Protection Status